JASPによるベイジアンANOVAとANCOVA その2[JASP Advent Calendar 2021]

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この記事はJASP Advent Calendar 2021の14日目の記事です。
前回の記事に続いて,JASPによる共分散分析(ANCOVA)とベイジアン共分散分析の実行方法を見ていきます。なお,本記事の説明は,JASPのオンラインテキスト「JASPで統計を学ぼう!」のChapter 13の内容に基づいており,以下の分析はすべてWindows版のJASP ver 0.16上で実行しています。

共分散分析とは

共分散分析(ANCOVA)は,分散分析と同様に複数の群間の平均値差の検討に用いられる分析です。分散分析との違いは,独立変数以外に従属変数に影響すると想定される共変量をモデルに投入し,共変量の影響を調整したうえで群間差を検討可能である点です。

実験系の研究では通常,交絡変数は統制して(ないし,統制したと見なして)実験を行いますので,あまり共分散分析を使う機会はないかもしれません。どうしても統制の難しい共変量がある場合や,探索的な分析を行う場合に有効でしょうか。

JASPによる共分散分析

それでは,JASPで共分散分析を実行してみましょう。例によってJASPのライブラリにある共分散分析用のサンプルデータを使用します。”開く”→”データ ライブラリ”→”3. ANOVA”から”Viagra”データを開いてみましょう。
説明するのがちょっとアレなデータなのですが,まあそういった薬を投与した際の,男性の性的衝動を測定したという架空データのようです(Wagenmakers, et al., 2020)。”dose”は薬の投与量の条件(1=プラセボ/2=弱投与/3=強投与),”libido”は性的衝動,”partnerLibido”は対象者のパートナーの性的衝動を表す量的変数です。どうやって測定したんでしょうね。
上部の”分散分析”のメニューから,”共分散分析”を選択します。

まずは一元配置分散分析と同様に,従属変数に”libido”を,固定要因に”dose”を投入してみます。記述統計量プロットも描いてみましょう。分散分析表を見てみると,”dose”の主効果が有意ではないですね。「サンプルサイズが足りなかったかなー。グラフはいい感じなんだけどなー。」といったところでしょうか。

ここで,従属変数である”libido”には,薬の投与条件以外にも”partnerLibido”も影響している可能性があります。そこで,”partnerLibido”を共変量に投入してみます。

分散分析表を見ると,”partnerLibido”が有意になっており,”partnerLibido”の変数が共変量として従属変数に影響していたことが分かります。また,共変量を投入したことで,”dose”の主効果が有意になりました。”partnerLibido”の影響を調整したことで,従属変数”libido”の群間差について,より精度の高い検定を行えたといえます。

JASPによるベイジアン共分散分析

ベイジアン共分散分析も同様の方法で行えます。”分散分析”のメニューから,”ベイジアン”のグループ内の共分散分析を選択します。

”従属変数”に”libido”,”固定要因”に”dose”を投入してみます。帰無仮説に相当するNull modelと比較しても,”dose”の項を含むモデルはベイズファクターが高いとはいえず,むしろ下がっています。

共変量に”partnerLibido”を投入すると,”dose”と”partnerLibido”の項を含むモデルのBFがNull modelを上回ります。すなわち,上述の共分散分析と同様に,”dose”と”partnerLibido”の効果があったという結論になります。ただし,1.46というBFは証拠として大きいとはいえず,強い主張はできないという点には注意が必要です。

このように,JASPでは共分散分析も簡単に実行することができました。分散分析・共分散分析以外にも,相関分析や回帰分析,独立性の検定といった,学部レベルで必要な統計手法は一通り実装されています。個人的には,JASPの強みはベイズ統計の枠組みでこれらの分析を行えるところと,出力が綺麗なところだと思っています。皆さんもぜひ使ってみてください。なにせ無料ですし。

それでは,Enjoy!


Wagenmakers, E.-J., Kucharský, S., & the JASP Team (2020). The JASP Data Library (1st ed.) https://psyarxiv.com/vr2u8/